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NO.05 05.01
西田 亮介 氏 ( 社会学者/立命館大学大学院特別招聘准教授 )

日本の国会議員におけるソーシャルメディアの活用状況

いま、研究テーマのひとつとして、情報社会における政策に関心を持っています。具体的にはソーシャルメディアと国会議員についての研究を行っています。ソーシャルメディアを使っている国会議員およそ200人を対象に、彼らの発言をプログラムを使って収集し、コミュニケーションのパターンや、伝搬力(情報が伝わっていく力)と双方向性(人と情報をやり取りしているか)について分析しています。これはぼくの後輩で、慶應義塾大学政策・メディア研究科の小野塚亮くんとの共同研究です。

ツイッター議員(ツイッターを使っている国会議員)というと、ツイッターを使って国民とやりとりしながら政治に関する新しい情報を積極的に発信していたり、新しい情報に対する感度の高い議員という印象があるかもしれません。ところが、ツイッター議員の中でおよそ半数はツイッターにおいて伝搬力をあまりもたず、同じく国民とのコミュニケーションもあまりしていないのが現状です。言わば空気のような存在です。ほかには、伝搬力が弱いがコミュニケーションをしている議員、コミュニケーションはしていないが伝搬力がある議員、コミュニケーションをしていて伝搬力もある議員に分類することができます。それぞれのグループの議員についてより詳細な分析を行っています。

コミュニケーションをしているが伝搬力を持たないということは、何かしらツイッターのユーザーたちとやり取りをしているけれども、それがリツイートされていかないということを意味します。解釈すると、ツイッターの読み手にあまり重要視されていません。。その次に、コミュニケーションをしないけれども伝搬力のある議員がいます。彼らはユーザーとメンションをあまり飛ばしあわないけれども、ツイートがすごくリツイートされていきます。特にもともとテレビやマスコミなどで有名な議員に多く見られる傾向です。つまり、ネットを使わなくても、そもそもマスメディアなどで知名度があるが、新しいコミュニケーションの回路としてツイッターも使っているというわけですね。

注目すべきは、コミュニケーションをしていて伝搬力のある議員

注目すべきはおよそ10%ほどの議員だと考えています。ツイッター上で、ユーザーとメンションを飛ばしあい、さらに発するツイートがRTされていく、すなわち影響力を持っている議員たちです。彼らは少数ですが大変興味深い存在です。もちろん、ツイッターの中での存在感は必ずしも投票時の影響力と関係するかどうかはわかりませんが、フォロワー数で分析すると、彼らが一番フォロワーを持っています。ここでは詳細は割愛しますが、他の議員群と比べて格段に多くのフォロワーを持っています。少なくともツイッターという場に限って言えば、最も読者を持っていて、そのメッセージは潜在的にもっとも多くのユーザーの目に触れる可能性があります。

このことは、ネット選挙運動の解禁に関連して、二つの示唆があると捉えています。まず一つにこのソーシャルメディアを駆使している議員たちを実際見ていくと、一日にツイートしている量が多い。大半の議員というのは平均すると、1日で1回、2回ぐらいしかツイートしていませんが、彼らはたくさんツイートしています。
この10%の人たちが少なくともツイッターのなかで影響力をもっているのだとすると、ソーシャルメディアの特性をうまく使えるようになればソーシャルメディアの世界の中では影響力を持ちうるということです。ということは、議員さんたちがソーシャルメディアを駆使することで、つまりユーザーとメンションを飛ばしあい、議論をしていくことで、新しい影響力を持てるかもしれないということを示唆します。マスメディアに取り上げられる国会議員はごくわずかですが、ソーシャルメディアはより開かれているといえるかもしれません。ですから、ネット選挙運動解禁を含めて、より国会議員とネットの距離を近づけていくことで、従来よりも多くの国会議員のメッセージが国民に届きやすくなるといえるかもしれません

もう一つの示唆は、ある意味真逆の見解です。さきほどの10%の国会議員というのは、比較的若くて、新しい、派閥政治に属さない人たちが中心です。ということは、ソーシャルメディアをうまく使いうる人たちは、旧来の日本の選挙、あるいは政治における力学やパワーバランスを変えてしまう可能性を秘めていますこのことは従来の選挙戦術や政治コミュニケーションに慣れ親しんだ国会議員たちにとっては、現状維持を選択する動機付けが働くかもしれません。

このように、 ぼくたちの研究は、ネット選挙運動の解禁にとって、両義的なニュアンスを含んでいます。

有権者への影響と公選法の本来の意味

しかしながら、有権者にとっては、インターネットを利用した選挙運動が解禁された方がよいと考えています。なぜなら、政治と選挙に関する情報を取得するコストが格段に下がるからです。もともと公職選挙法の第1条を見ても分かる通り、この法律は公平な選挙を実現すること、そして民主主義の増進を目的としています。

政治と選挙は現代社会にとってものすごく高コストです。ぼくたちの生活と照らしあわせてみると、選挙期間だからと言って仕事が休みになるわけではないですし、テレビの政見放送もその時間に家にいるとは限りません。結局、ぼくたちが実際にどのように政策や政治家について知るのかというと、文書図画規定があるのでポスターかパンフレット、あるいは書籍になります。しかもサイズや枚数も限定された無味乾燥なものです。大抵はつまらなくて、よく読みもせず捨ててしまうでしょう。それは法の精神と現代の生活が必ずしもうまく噛み合っているとはいえないのではないでしょうか。

「若者の政治離れ」がよく言われますが、「政治に近づきたくても近づくことができない」というのが現実ではないでしょうか。実際、橋下大阪市市長がツイッター上で、70万人以上のフォロワーを持つことからも、政治に対する関心それ自体が薄いというわけではないように思えます。
もしネットを利用した選挙運動が可能になれば、そこが大きく変わっていきます。政策集も政見放送も全部いつでもアクセスできるようになるかもしれません。そうなれば仕事が忙しい人でも、余暇の時間に見ることができる。あるいは仕事の合間に、政治と選挙のことを知ることができます。情報へのアクセスコストを格段に下げるという意味で、有権者にとってはインターネット選挙運動の解禁は、重要だと思います。

ネット選挙運動によって政治家側のインセンティブをどのように変えるか?

政治家たちのネット選挙運動を可能にするように仕向ける方法についてはいろんな考え方があるでしょう。コンサルタントやPR会社への依頼によって金権政治が懸念されるのだとすれば、たとえば政治家本人がソーシャルメディアを使うということに限定して許可するというような方法もありうるでしょう。そうすれば、フェアなソーシャルメディアの利用が見込めます。

アメリカでは、選挙の時は必ずコンサルタントやPR会社がつきます。そのような方法でソーシャルメディアを運用するということであれば、候補者が持っている資源によってPRの方法が変わっていくということですから、ソーシャルメディアを利用したからといって必ずしもコストが下がるわけではありません。それは公職選挙法の理念とも反するでしょう。これは技術の問題ではなくて制度設計の問題です。規制と技術を両輪にした導入によって解消できるかもしれません。こうした問題意識は、昨年出した『「統治」を創造する』(春秋社)に記しました。

公職選挙法の元来の目的を実現すべき

先程も述べたように、公職選挙法は本来は公正な選挙の実現が目的です。法改正を抜きにするのであれば、ソーシャルメディアの利用が選挙運動に当たらないという解釈も可能ではないかでしょうか。現実はかなりその線で運用がなされているようにも感じます。選挙運動ではなくて、政治活動としてのインターネットの利用は今でも認められています。ホームページでの党首の行動等は、選挙期間中でも更新してもよいこととなっています。ソーシャルメディアも選挙への利用を主たる目的として想定されたメディアではないという解釈が可能であれば、選挙運動に該当しない可能性があります。

前回の選挙の時も、実際に期間中にツイッターを使った人がいたはずですが、結局お咎めなしだったはずです。そういう意味ではいまはまだグレーな領域であり、例外事項だという合意を取り付けることでもいいのかもしれません。

いずれにせよ公職選挙法のそもそもの理念にのっとり、きちんとした目的に沿った政治の制度設計をおこなう必要があるでしょう。

技術と制度を両輪にした政策デザイン

インターネットと民主主義の話になると、すぐ出てくるのが技術による民主主義の改善という話題ですね。2000年代前半にもネット選挙解禁運動が盛り上がりました。そのときも「ネット選挙を認めるべき」という正論を前面に押し出したわけですが、やはりうまく国会議員たちの共感を集めることができず、うまくいきませんでした。間接民主制を採用するシステムが現在走っている以上、直接の統治の意思決定は国会議員が担うわけです。うまく彼らを取り込まなければなりません。

このような側面をあわせて考えると、新しい技術/メディアが日本の民主主義を改善するという見解はあまりに素朴です。日本型システムの「異物」に対するロバストネスは思いの外、強固であるという認識でいます。結局のところ、インターネットを利用した選挙運動の解禁はそこが到達点ではないということを認識する必要があります。老朽化した日本型システムを、現状を参照しながら、組み替えていく。そのデザインをどうするのか。そのビジョンの共軛範囲が広ければ、そこに付随するかたちで、ネット選挙運動解禁に対する国会議員たちの共感も得られる可能性があります。あるいは、世論が後押ししてくれるかもしれません。おそらくネット選挙運動解禁だけでは、強いメッセージ性を持ちえませんし、それで何をしたいのかが見えてきません。そこが、ぼくがいまいちネット選挙運動解禁論者を全肯定できない理由でもあります。

解禁してもある種の古いガバナンスが残った政治体制を温存するのであれば、それは全く意味がありません。解禁しなくても、別のアプローチもありうるでしょう。たとえばまずは各党の党議拘束を外すよう働きかけることで、日本のガバナンスの形を変えていくことができたりもするのかもしれない。消費税増税問題のようなデリケートなイシューが政策課題になっているときですからね。

さて、そろそろまとめに入りますと、実現したい政治像を明確にすること、そのうえでその実現手段として技術と制度をセットにしてアプローチしていくこが重要だというのがぼくの意見です。インターネットの解禁だけではなくて、公職選挙法を再検討することも重要でしょう。ただネット選挙運動解禁を唱えるだけではなくて、なぜ公職選挙法という法律が定められたのか。その元来の目的はなんだったのかを考えてほしい。昔は汚職や不正がばれにくかったので、公職選挙法によってそれを徹底的に防ぐべく、これほど強固な制約がかかっています。この結果、今のところ日本の選挙運動は個人を名指しにした誹謗中傷合戦や露骨な金権政治をぎりぎり回避できているといえるかもしれません。おそらくその理念は、今でも間違っていないはずです。

日本の政治環境はある意味で特殊です。多少、大阪維新の会や地域政党の出現などによって変わってきてはいるけれども、 メディアの中で誹謗中傷合戦をやらなくてもいいですし、実は自己資金がなくても政党とうまく利害関係が合致すれば選挙に立候補することができます。そういう日本の選挙のプロセスならではのいい面もあるわけですよね。そういった評価すべき側面を残しながら、現状とそぐわないところをどうやって変えていくのか。技術と制度設計、双方に目配りしながら、その構想を提示することが求められていると思います。

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VOICE / ARCHIVE

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No.19

Suzukiさんのサムネイル画像

2012.05.28
古賀茂明氏
大阪府・市特別顧問/元内閣官房内閣審議官

>> ネット選挙は100%大賛成。日本の大きな変革を始めなければ大事な間に合わなくなる。大事な決定をするときに、多くの人が参加して決めてもらいたい...

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No.18

嘉田さんのサムネイル画像

2012.05.28
嘉田由紀子氏
滋賀県知事/未来政治塾塾長

>> 実は、政治というのは未来をつくる。今若い人が仕事が無い、年金がどうなるんだろう。子供も育てにくい。こういう仕組みは過去10年前...

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No.17

Suzukiさんのサムネイル画像

2012.05.27
Emmy Suzuki Harris氏
change.org 日本キャンペーン担当

>> change.orgとは署名活動をサポートするプラットフォームで、毎月15万ほどのキャンペーンがスタートしています。全世界で1600万人ほどの...

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No.15

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2012.05.19
岩瀬大輔
ライフネット生命保険副社長

>> 若いひとが、より政治に関われば、この社会は変わると思う。そのために、インターネット選挙をより使いやすくすることは非常に大切 ...

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No.10

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2012.05.19
荻上チキ
評論家/「αシノドス」「シノドスジャーナル」編集長

>> まず前提として、選挙や政治に参加「しない」ということは、それは要するに「損をしてもしょうがなくなる」ということです。なにかしらの政治参加を一切...

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No.13

勝谷さんのサムネイル画像

2012.05.19
勝谷誠彦
コラムニスト

>> ネット選挙運動はもちろん解禁されるべきでしょう。日本の選挙は色々縛りが多すぎます。こんな国は世界中にありません。...

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No.12

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2012.05.19
飯田哲也
環境エネルギー政策研究所所長

>> ネット選挙をもっと活性化するように解禁したほうが良い。去年の3月11日の地震、津波、原発事故以降、日本が大きく変わったのは、日本版ジャスミン革命...

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No.11

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2012.05.18
岸博幸
慶応義塾大学大学院教授

>> 利点として、ネットが現在のように普及し一般レベルにまで使われている状態において、本来投票行為というものは、できるだけ多くの情報を知り、...

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No.10

上野さんのサムネイル画像

2012.05.17
上野千鶴子
社会学者/WAN理事長

>> 私のような還暦すぎた人間でも、今やiPadは手放せない。インターネットがこれだけ普及した時代に、これを政治の世界に持ち込まないということは本当に遅れているというか、既得権益を守りたい...

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No.09

関根さんのサムネイル画像

2012.05.16
関根健次
ユナイテッドピープル株式会社
代表取締役

>> 禁止されている選挙運動期間中(2週間)に、政治に興味を持った場合、誰かから話を聞かない限り考え方が変わらない。インターネットで情報が見られることは判断をする上で材料が広がるから必要だ...

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No.01

宮台さんのサムネイル画像

2012.05.14
宮台真司
社会学者

>> ウェブサイトについて言えば、これは文書の“頒布”ではない。なぜかというと、渡すのではなくて、わざわざ知りたい人が情報を取りにくるわけですよね。簡単にいえば「PUSH」ではなくて「PULL」型である...

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No.01

津田さんのサムネイル画像

2012.05.12
津田大介
ジャーナリスト/メデイアアクティビスト

>> インターネット選挙解禁をするかしないか、民主党が政権をとった2009年以降ずっと大きな問題であったが、このようなことを禁止している先進国はないので、政治の情報がインターネット...

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No.01

家入さんのサムネイル画像

2012.05.10
家入一真
paperboy&co.創業者 / partycompany Inc.代表

>> 政治って、行っても無駄だと感じる前に、オヤジたちのものだというのが先にたってしまう。別にかっこよく、などとは言わないけど、いまってあまりに時代とかけ離れているんじゃないかと思う。...

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No.01

駒崎弘樹さんのサムネイル画像

2012.04.25
駒崎弘樹
NPO法人フローレンス代表理事

>> これまでの時代は、税収が右肩上がりで行政にある程度任せることができたが、いまの経済状況において、行政がすべてをおこなうことはほぼ不可能になってきました。多様なあり方すべてに...

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No.01

萱野稔人さんのサムネイル画像

2012.04.27
萱野稔人
津田塾大学准教授

>> インターネットの登場によって、政治だけでなく民間でも多くの情報開示が進みました。例えば、ネットもなくテレビもそれほど発達していなかった時代に、アメリカの大統領の演説を聞け...

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No.01

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2012.04.26
熊谷俊人
千葉市長

>> 政治家はわたしたち国民から選ばれます。しかし、いまはその政治家を選ぶプロセスに問題があります。その根っこである選挙制度をかえなければダメです。“政治”がおかしいのは“政治家”が...

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No.01

田原総一朗さんのサムネイル画像

2012.04.28
田原総一朗
ジャーナリスト

>> ネット選挙運動の解禁については大賛成。いま、若い人の80%以上は携帯をもっている。そうしたネット普及の状況の中、議員に おいても、選挙において使えないとまったくもって意味が...

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COMING SOON...

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